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どぜう往来 二十一号 [昭和六十三年五月発行] 助七思い出話 五代目 越後屋助七(渡辺繁三)

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どぜう料理の“秘伝”伝授致します。

 五月は三社祭の月です。毎年、この頃になると川魚のどじょうもピチピチと精気をみなぎらせ、水面にそのひょうきんな顔をのぞかせるようになります。これからがどじょう料理の美味しい季節です。そこで、今回は特別にどぜう料理の秘伝をお教えしましょう。

〈どぜうなべ〉
 どぜうは一尾五匁くらいの小さく新しいものが骨がやわらかくていい。
 まず、生きたままのどぜうをザルにとり、水をきり、深めの鍋に入れ、上から日本酒をかけてやる。一貫目のどぜうに酒は二合ぐらいの割合でいい。はじめのうち、どぜうは浮かれてはねまわるが七、八分もすると酔いがまわって、すっかりおとなしくなる。この酔い加減が難しいのだが、手で持ち上げてみて、頭と尾をだらりと下げるくらいが適当だろう。酒を飲ませるのはどぜうの臭味が抜けて、骨も一段とやわらかくなるからだ。

 別に甘味噌仕立ての味噌汁を用意して沸いたところへ、酔い加減のどぜうを入れる。しらふだったら暴れて大変だが、どぜうも酔いつぶれているので楽に扱える。はじめは蓋をして強火にかけ、泡を吹いてきたら弱火にして、箸で持ち上げても形が崩れないほどのやわらかさに煮込む。これは時間にして30分ほど。
 どぜうが煮えたら味噌汁からすくい上げ、やや淡味のタレで煮込み、薬味としてきざみネギを上からかけ、煮ながら熱いのを食べる。ネギを入れてかみ合わせていると、カルシウムがリン酸カルシウムになって体内の吸収を助けるといわれる。

〈どぜう汁〉
 前にもこの欄でふれたが、河竹黙阿弥作「慶安太平記」の丸橋忠弥堀端の場で、忠弥が迎え酒を三合呑んだあと「角のどぜう屋で」口にしたのはどぜう汁がふさわしいだろう。捕方に捕まる直前だから、どぜう鍋をゆっくりつついていたのでは、イメージがわかない。作者の河竹黙阿弥は大のどぜう好きだったらしく、たびたび当店のどぜうを召し上がったようだ。どぜう汁に話を戻そう。
 どぜう鍋と同じ要領で、どぜうに酒を飲ませてから、味噌汁に放り込む。それに新ゴボウをあしらって召し上がっていただきたい。なお、味噌は甘味の江戸味噌で、粒味噌をあたって使っていただければ味は満点。

 しまいに私が若い頃、遊び感覚で作ったどぜう料理をいくつかひと言メモ風にご披露しよう。
●どぜうを開いて天ぷらにすると、大変かるくて鮎の稚魚のような味がする。
●大きいどぜうを蒲焼きのように串を打って白焼きにし、ワサビ醤油で食べるのはなかなかオツです。
●どぜうの卵をだしで煮ておいて、これをシンにして玉子焼を作ると子供にも喜ばれてとてもおいしい。
●どぜうの肝だけを集め、ヒネショウガの千切りと一緒に辛目のタレで煮込む。ほろ苦くて、酒のさかなにはうってつけの珍味。
●小さいどぜうをあめだきにして味わうのも旨い。醤油、みりん、昆布だしで煮て、上がり際に水あめを入れて照りを出す。
 何はともあれ、一度お試しを!
by komakata-dozeu | 2010-06-01 10:00 | どぜう往来
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